『ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!』DVD発売記念インタビュー

鈴木ヤスシがオラオラ喋るもんねー!

<取材・文 伴ジャクソン>



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劇場公開から48年の時を経て、幻の劇場アニメ『ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!』が遂に衝撃の初ソフト化決定! それを記念して、本作の主演を務めた歌手・俳優・司会・声優などマルチに活躍中の鈴木ヤスシ氏に当時の思い出を伺うインタビューが実現。目ん玉ひん剥いて読みやがれ、オンドリャー!

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■ウォッチザシャブ!!! ビートルズ、モンキーズも演じた名声優

――『ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!』(以下、『やっちまえ!!』)で、ヤスシさんは主役・ブス夫を演じられています。
鈴木 ハハハハ、あんまり誇れる話じゃないよね。
――いえいえ、そんなことないですよ!
鈴木 今回の取材の前に一応『やっちまえ!!』のことをネット検索してみたら、YouTubeに上がっていた感想で誰かがうまいこと言ってくれてたよ、「観る覚せい剤」だってさ。あと「鈴木ヤスシがただ怒鳴ってるだけ」とか。まあ、全部本当だね(一同爆笑)。
――まず当時、原作を担当された谷岡ヤスジさんの漫画はご存じでしたか?
鈴木 これが恥ずかしながらまったく知らなくてね、だから絵や台本を見て初めてビックリしちゃったんだ。
――まあ、普通のアニメを想像したら驚きますよね(笑)。谷岡ヤスジさんは、当時性や笑いに関して先鋭的なアプローチをした漫画家だったんですが、それを劇場アニメにしようというのも大胆な話ですから。本作出演の経緯は覚えていらっしゃいますか。
鈴木 僕は当時、この作品にも参加されている高桑慎一郎という監督(本作のクレジットでは「演出」)とよく仕事をしていたんですよ。この作品もその流れで、高桑さんが呼んでくれたんじゃないですか。ほら、「ヤスジ」と「ヤスシ」、名前も似ているでしょう?
――本当に名前が起用の理由だったら凄すぎますが! ともあれ、当時のヤスシさんはドラマや映画で俳優をやっていた一方、声優の仕事も随分とこなされていらっしゃいますよね。
鈴木 おっしゃる通り、いろいろやらせて頂きましたよ。アニメは「どら猫大将」「アーチーズ」とかね、あと「モンキーズ」のテレビシリーズではミッキー・ドレンツ、映画だとビートルズのリンゴ・スター、エルヴィス・プレスリーなんかも演じました。あと、ジェリー・ルイスの吹替もやっていたんですよ。ジェリー・ルイス、知ってます?
――はい、ディーン・マーティンとの「凸凹」シリーズなんかは観ています。
鈴木 あと「ブラック魔王とケンケン」のナレーションとか。あれもやったよ、「おじゃまんが山田くん」。
――ありましたねー!
鈴木 あそこの下宿に住んでるヨシダっていうのを演じたんだ。あと、「冒険コロボックル」のボックルね。もうそういうのをボンボンやってたから。
――凄いですよね、エルヴィスにビートルズ・モンキーズのメンバーを両方担当した声優って、ヤスシさんくらいじゃないですか! 僕らの世代はヤスシさんの声を聴きながら成長してきたんだと思います。そもそも、声優のお仕事をされるきっかけになったのは?
鈴木 最初は誰だろう‥‥ハッキリ覚えていないですけれど、アニメは高桑さんに声をかけてもらったんじゃないですかね。大塚チカ(周夫)ちゃん、納谷六朗さんや関敬六さん、コロムビア・トップさんなんか、よく一緒になってやっていましたから。この『やっちまえ!!』もそうだよね?
――はい、今振り返ってみても、豪華なキャスティングです。ちなみに実写でのアドリブと吹替のアドリブ、特に大きな違いはなかったですか?
鈴木 全然。今のアニメはきっちりしていて、口の動きに合わさなきゃいけないんでしょうけど、こんなアニメのキャラクターは口パクも適当じゃない? まあ基本、口が開いてる時に適当に喋っておけばいいわけだから(きっぱり)
――ハハハ、自由すぎる姿勢ですね!
鈴木 もちろん、それをOKにするかどうかはディレクターの判断ですよ。面白ければそのままだし、逆に「今のところ、もっと大げさに!」みたいな指示が出れば、ちゃんとそれに合わせましたからね。

■ストーリーがわからないまま演じていた

――ディレクターである高桑さんの演出の特徴、みたいなものは何かありましたか?
鈴木 僕ら演者に基本はお任せでしたね。逆に言えば、そういうアドリブに対応できる人たちだけで固めていた印象があるね。この作品も、高桑組のメンバーばかりでしょう?
――ああ、確かに。
鈴木 勝手知ったる仲間達ばかりだから、アットホームな感じでやれているんですよ。
――なるほど、その空気感は感じられますね。実際、高桑さんが演出されたハンナ・バーベラの一連の作品は、演者の個性が日本オリジナルの魅力になってますからね。
鈴木 そうそう、僕なんかも「今日も今日とてポッピーは……」なんてナレーションをやってたりしましたけど、多分向こうの放送だと入ってないよね。
――高桑さんは、そういう演者の個性をしっかり見極めて集められる力がある方だった。
鈴木 そうですよ、それより前には上田吉二郎さんや左卜全さんなんかも起用されているわけですから。
――この作品で言うと、「天才バカボン」のパパ役・雨森雅司さんが、ブス夫のパパ役っていうのも気が利いてますね(笑)。
鈴木 雨森さんは面白い人でね、吹替の現場で自分の番が終わって席に戻ると、台本を丸めて隣に座っている女性陣、例えば鈴木弘子さんの耳に当てて「今日デートに行こうよ……」とか囁くんだよ。
――ハハハ、よりによって本番中に口説いてるんですか! 雨森さん、そんな茶目っ気がある方だったんですね。
鈴木 そうそう、懐かしいな。もう、最近は新聞の死亡欄を見るのが怖くなっちゃってね。仲よくやっていた人が次々に亡くなっているから。
――では、この流れで『やっちまえ!!』収録の際の思い出などをお聞かせいただけますか。
鈴木 台本は一応ありましたけれど、基本的にアドリブばかりやっていました。だって、台本そのままにやっても面白くないし、そもそもそこに卑猥な言葉なんて書いてないからね。だから、それはこちらの方で載せるだけ載せておいて。
――やり過ぎのセリフと演技を(笑)。
鈴木 そこは女性陣もね。鈴木弘子さんや小原乃梨子さん、増山江威子さんとかと一緒に卑猥なことを言って、ディレクターから「それはまずいだろう!」なんて叱られて、後で1シーン丸ごとカットになるなんてことは結構あった。女性陣もうら若き……までとはいかないけれど(笑)、下を向いて恥ずかしそうにやってました。
――1シーン丸ごとカットとなると、キツイですね。 
鈴木 なので、場面によっては2パターン録るようになるの。言いたい放題やってる過激なやつと、ちょっとトーンを落としたおとなしいやつ。そのどちらを選ぶかは、ディレクターにお任せしてね。
――普通よりも手間暇がかかってますね。
鈴木 しかも俺はこの作品、ほぼ叫びっぱなしだから疲れちゃってね。これ、1日で録ってるから。
――全部1日で?
鈴木 そう、しかも長丁場で。でも、この映画さ、何が言いたいのかさっぱりわかんないんだよね、内容が(一同爆笑)。
――ワハハハ、こちらが言いにくいことをズバリと! 話によると、バラバラにしたマンガのコマを並べて作品の構成を考えたという「ハプニング・アニメ」の要素もあるらしいですから。
鈴木 だから、こっちはストーリーがわからないまま、1シーン1シーン自由に「〇〇なんだもんねー! パックンパックン!」みたいな感じで喋り続けていたわけ。

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■どんな仕事も「やっちまえ!!」精神で

――まさに瞬発力でこなしていった、と。自由と言えば、歌を歌ったりダジャレを入れてくるあたりも、やはりアドリブなんでしょうか。
鈴木 そうだよ。今はデジタルで細かいところを治せるけど、あの当時はアフレコで何か間違えると、また最初からやり直さないといけない。せっかくいいアドリブを思いついて入れても、誰かが間違えちゃうとまた最初からやり直しになるんだよね。でも、同じアドリブをやるのはつまらないから、そういう時はまた新しいアドリブを考えて。だからさっきの話に戻るけど、ディレクターが俺を選んだのは、そういうアドリブが得意なところを見込んでだったのかもしれないよね。
――確かに! 梅宮辰夫さん主演の『不良番長』シリーズでも、ヤスシさんはアドリブばかり連発していましたものね。
鈴木 そうだよ! あの頃は無茶苦茶やってたから。『不良番長』だと、金庫を盗もうと探している時に女性のスカートの中に手を突っ込んで「マ〇コ」って言ったりして(シリーズ第15作「一網打尽」より)。そのくらいのことは、録音の時も平気で言っていましたからねー。
――下品な言葉に慣れっこだったのが幸いしたのか、災いしたのか(笑)。
鈴木 またその頃ね、僕は日活ロマンポルノに出てるの。白川和子さん主演の『性豪列伝 死んで貰います』(72年・林功監督)っていう作品なんだけど、馬五郎っていうナニの大きくて何度でもできる男の役。デビュー当時だと、「ジェニ・ジェニ」歌ったり、歌番組の司会なんかもやってたからカワイコちゃんを気取っていたけど、昭和40年代半ばに入ったらもう、何でもござれですよ(笑)。
――ちなみに、今まで声の仕事に関してヤスシさんが取材されたことってあるんでしょうか。
鈴木 ないない、「そんなことやってたんですか?」みたいな感じで触れられるくらいで。
――じゃあ、今回の取材は貴重なものになりましたね。
鈴木 最近だと、師匠の渥美清さんの取材ばかりだよ。ついこの前も話をしてきたけど。
――ああ、ヤスシさんは高校時代に渥美清さんの一番弟子だったんですよね。
鈴木 そうだよ。その後、フジテレビにスカウトされて「グンゼジャズトーナメント」っていう生番組の司会をやることになるんだけど、後で玉置宏さんに「ヤッちゃん、あなたが司会のスタイルを変えたんだよ」って言われてね。あの頃の歌番組の司会はたいてい、ロイ・ジェームスさんみたいに五・七・五調でジェントルに語るスタイルがメインだったんだけど、俺なんか訳が分からないからもう無茶苦茶に喋ってたんだ(笑)。その頃は、そういう自然体の喋りが新鮮に見えたんだよ。
――型破りな司会ぶりがウケたんですね。そう考えると、ヤスシさんはデビューも型破りだし、声優としても型破りだったと言えるんじゃないですか。
鈴木 うん、どんな仕事もとにかく「やっちまえ!!」精神でやっていた感じはあるな。
――改めて、『やっちまえ!!』をご覧になられて、当時の自分の演技などに関してどんな印象を持たれましたか。
鈴木 もっと激しくやりゃ良かったな、って思いましたね。今観ると、ちょっと甘ったるい気がするよ。
――俺はまだまだ行けたぞ、という感じなんですか。
鈴木 絵だって、今だとまだまだ見せられたんじゃないかと思いますものね。例えば、セックスシーンだと、肝心のところで手が出てきたりして、見えなくなるじゃない。
――ああ、股間あたりの描写になると、あからさまに隠されますね。話によると、当時としては表現が過激すぎて、カットされたシーンもいくつかあったようです。
鈴木 今だったらそのカットシーンを復元できるんじゃないかな。そしたら、もっと面白くなっていたのかもしれないよね。
――うーん、製作会社も潰れていますし、当時の映画会社の状況を考えると、没フィルムは即廃棄だったんじゃないかと。


■このDVD発売、大バクチじゃないの?

鈴木 そうか、それは残念だね。あと、改めてアテレコし直すっていうのも面白かったかもね。ほら、今の風俗や言葉を織り込んでいくと、また新しい印象が出てくるから。
――なるほど、しかしお言葉を返すようで申し訳ありません。僕はこの作品、今回初めて拝見したんですが、声優の皆さんの演技の自由ぶりにビックリしたんです。これは今だと絶対に無理ですよ。
鈴木 もっとギリギリの内容にできると思ったんだけどなぁ。
――言葉や描写に関して言えば、今の方が厳しいと思います。そういう意味では、この状態ですでにギリギリです。そもそも女性を「やっちまえ!!」っていう姿勢が既にアウトな感じもしますし。
鈴木 何だよ、「やっちまえ!!」もダメか~。
――だから、今の若い人がこれを観ると、先程のヤスシさんの言葉じゃないですけれど、「こんなこと、アニメでやっていいの?」と驚くと思います。
ここで、少し突っ込んだ話もお聞かせ下さい。この作品は公開1週間で打ち切りになったんですが、当時ヤスシさんにその情報は入ってきましたか?
鈴木 いや、知らなかったな。
――この作品のプロデューサーが、曰く付きの方だというのはご存じでしたか?
鈴木 渡邊清さん(東京テレビ企画取締役・プロデューサー名は新倉雅美)ね。あとで拳銃がどうしたこうしたみたいな話も聞いたけど(※)、そういう人には見えなかったね。
――では、ギャラ未払いなどのトラブルもなく?
鈴木 そこは高桑さんがちゃんとやってくれたんじゃないかな。おそらくだけど、音響関係の費用は一括して高桑さんに払って、そこから俺たちにギャラが支払われたと。多分、他のアニメなんかもそういうお金の流れだったんだと思う。それにしてもし、『やっちまえ!!』のDVDを観るターゲットって、どういう人なんだろうね。若い人なのか、それとも当時観て「懐かしい」と思う僕くらいの世代なのか。
DIG担当 劇場に足を運んだ人を探すのは難しいと思います。その後、上映の機会もほとんどありませんでしたので、間違いなく、今回のDVDが初めての鑑賞機会という方がほとんどでしょうね。
――僕もタイトルは知っていましたが、実際に観ることはなかなか叶わなかったんです。
鈴木 はは~。そこまで幻の作品ということは、今回のDVD発売はある意味大バクチですな!(一同笑)
――とはいえ、実はまだ詳細な告知はされていないんですが(取材時)、この作品のDVD化が告知されてから結構な話題を呼んでいるんですよ。
DIG担当 はい。権利者不明の作品だったので、インターネット上でこちょこちょ調査活動を行っていたら、「これはソフト化への布石か!?」とマニアの人たちにあっさりバレてしまって、ちょっとした騒ぎになりまして(笑)。それだけ、本作への期待値は大きいと思います。
鈴木 ええっ、本当に?
――そうですよ。今回の取材も、そのさらなる起爆剤になれば、ということですから。
鈴木 じゃあ、頑張って宣伝しないとだな! 『やっちまえ!!』は今観ても興奮、爆笑だよ。本当にパックンパックン、ハフハフ鼻血ブーだから観てくれよ、オンドリャー!(絶叫)

※アニメの仕事が行き詰まった渡邊は拳銃密輸の仕事に手を染め、1986年5月2日、西多摩郡瑞穂町内のホテルからピストルを持ち出そうとしていたところを現行犯逮捕された。

2019年6月収録


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